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一般社団法人廃棄物資源循環学会 設立趣意書
 

一般社団法人廃棄物資源循環学会 設立趣意書

1990年に発足した「廃棄物学会」は、最終処分場逼迫やダイオキシン問題などの問題を背景として、主に「適正処理」の観点から「廃棄物学」を考究してきました。その後、資源保全問題や地球温暖化問題が顕在化するにつれて、私たちが主に取組んでいた廃棄物問題に関しても、解決の視点が下流側から上流側へと遡及し、減量リサイクルの推進や循環型社会構築へと社会の要請が変化しており、また、その過程と同じくして日本国内でも各種の法整備がなされました。学会としてもこのような動向を「廃棄物学」の概念の拡がりとして捉えながら活動してきましたが、世の中から見た廃棄物学会は、なお「廃棄物」に限られた狭い「学」を扱う学会として捉えられており、活動実態との間に認識のズレが生じております。こうしたことから、私たちが新たに取組んできている資源とエネルギーの問題や地球温暖化などの地球環境問題を視野に入れたとき、我々の「持ち場」であった「公衆衛生」、「環境保全」に加え「資源保全」、「資源循環」へと学の体系を拡大していることを世の中に明確に示していかなければなりません。

世界に目を向ければ、我が国と同様に資源循環に向けた取り組みを積極的に行っている先進国がある一方で、ごみ処理や生活排水処理のシステム整備が遅れ劣悪な衛生環境に置かれている発展途上国や、急激な経済発展や都市化に伴う廃棄物問題を抱える新興国が数多く存在しています。廃棄物問題を解決してきた日本の経験を活かし、廃棄物学会がこれまで構築してきた「廃棄物学」の英知を活用して問題解決に貢献することも大きな使命です。特に、経済発展が著しいアジア圏では、このような廃棄物問題だけでなく、日本で発生した廃棄物が資源として国際的に循環している状況もあり、国際間での適正な管理の枠組みづくりを先導していくことも我が国の責任であるといえます。

以上のような社会情勢の変化とともに、「廃棄物学会」の会員構成の多様化やそれに伴う活動の学際性も進んできていますが、このような社会の変革期における学会としての視座や将来展望を明確に示せていない状況にあり、そのことは会員漸減の現象としても現れ始めています。また、外部からの調査研究等の要請も高まっていますが、法人格をもたない任意団体であることが大きな支障になっており、公益性を有する学術団体として透明性を確保し広く社会に対して説明責任を果たしていくためにも、法人としての学術団体に移行することが喫緊に求められています。

このような背景から、これまでの「廃棄物学会」で築き上げた「学」を基礎としつつも、さらに資源・エネルギーの流れに軸をおいて「社会のあり方」を問い直し、日本のみならず世界の次の世代が、物質やエネルギーなどの資源の制約から生まれる様々な社会問題や廃棄物問題を未然に回避して持続可能な社会づくりができるようにしなければなりません。そのために私たちは、将来展望を共有し総合性、実用性、学際性を有する学術的な集合体として、これまでの廃棄物学会活動を基盤に、新たに法人格のある「一般社団法人廃棄物資源循環学会」を設立して移行することにしました。

本学会設立によって私たちは、学術的な立場から社会に向けて積極的に情報発信・問題提起・提言を行い、社会との密接なコミュニケーションに基づき、多様な主体の参加と幅広い学術的基盤の上に実学を指向する総合学会として活動します。また、国際的な学術的連携の中で学術的コミュニティー間のパートナーシップを構築し、相互の学問の発展に貢献します。そして、物質循環と廃棄物管理に関する学の体系化を進め、学術的立場から社会の先導的役割を担い、循環型社会の形成と廃棄物問題の解決に貢献していきたいと考えます。

平成20年4月24日
廃棄物学会第9期 理事会

「廃棄物学会」設立趣意書

科学技術と産業経済の発展は、人々の生活に豊かさをもたらしましたが、一方では「廃棄物」を大量につくりだしてきました。こうした大量の廃棄物をつくりだすことで人々は資源を浪費し、自然環境を損なうまでになってきました。人々の生活の営みや各種事業活動に深い関わりを持つ「廃棄物」は、発生する量的な増大に加え、質的な多様性のために、その処理や資源化を一層困難にしています。そのため都市問題としての解決の急務に加えて、環境保全や公衆衛生、あるいは資源保護の立場からも、「廃棄物」に対する長期的対応・対策が強く求められています。

一方で、こうした「廃棄物」の問題に係わっている人の数は国内だけでも極めて多数にのぼります。「廃棄物」に携わる行政機関、調査研究機関で働く人は10万人余りといわれ、民間企業で廃棄物処理施設の設計・計画・建設に係わっている人、廃棄物排出事業、廃棄物収集・運搬・処理・処分業に従事する人も膨大な数になります。また、「廃棄物」に係わる特定の特定の課題を解決しようとして作られた任意の団体も数百を数えるに至りました。さらにリサイクルなどの地域活動を通じて「廃棄物」に関心を持つ市民も年々増加しており、全国民の過半数に達しようとしています。これらの人々は既に現在もそれぞれの立場で「廃棄物」の研究を行っています。

ところで、「廃棄物」に関する科学は、学術的・総合的なものであって、その基礎をなす学術基盤はあらゆる分野におよんでいると言っても過言ではありません。法学、経済学、行政・社会学、医学、農学、水産学、理学、家政学、工学といった多くの学術分野から「廃棄物」研究が行われることが必要であり、実際に各分野で多くの研究者が個別的に調査研究に取り組んでいます。しかし、残念ながら、以上に述べた「廃棄物」に係わっている種々の立場の人々が、広い意味での研究者として、一堂に会して意見・情報を交換し、多面的かつ包括的に調査研究を進めていく、「廃棄物」に関する一元的な学会組織が今までありませんでした。

今後の日本の死命を制すると言われる「廃棄物」の縦断的・横断的な調査研究を促進し、調査研究の成果が正当に評価されるためには、そうした機能を発揮する学会組織作りが緊急に求められています。そして、その組織は「廃棄物」に関する研究の学際性・総合性・実用性から考えて種々の学術分野及び階層の人々の集合体となる必要があります。

このような認識のもとに「廃棄物」に関心を有する多方面の人々の英知を結集すべく、『廃棄物学会』を設立して、この分野における調査研究を推進すると共に情報交換や国際学術交流を実施して知識の普及を図り、質・量両面にわたる研究水準の向上をめざしたいと念願しております。また、このことがわが国の廃棄物管理の飛躍的前進に役立ち、あわせて諸外国の廃棄物管理の改善や地球環境の保全に役立つものとなることを願っています。

なお、ここでいう「廃棄物」とは廃棄物の処理及び清掃に関する法律にいう産業廃棄物及び一般廃棄物のみに限らず、未来や過去において廃棄物である物、いわば潜在的廃棄物とも言うべき物も含めて考えております。

平成2年3月27日
廃棄物学会設立発起人一同

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