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第10回企画セッション報告

第10回企画セッション報告

企画セッション「持続可能なバイオマス系廃棄物利活用」報告

日時:2012年10月22日(月)

場所:仙台国際センター 第五会場(第23回廃棄物資源循環学会研究発表会)

報告者:大門裕之(豊橋技術科学大学)

 

 2012年でバイオマス系廃棄物研究部会が発足して10年となる.1980年代初頭に石油代替エネルギーの一つとしてバイオマスが最初に脚光を浴び始めた.これを第一次バイオマス・ブームとすると,第二次は,地球温暖化問題への対応が世界的な課題となった2000年代となる.現在は,第三次となるのか,原油価格の高騰および2011年の東日本大震災と福島第一原発事故により改めてバイオマスに注目が集まっている.2012年9月には,バイオマス活用推進会議において構成された「バイオマス事業化戦略検討チーム」から日本型バイオマス活用ビジネスモデル構築のための戦略などについての報告がなされた.このような背景から,本企画セッションは,バイオマスが一過性のものではなく,持続的に利用ができるもの,すなわち,持続可能なバイオマス系廃棄物利活用とは何かを議論するため企画され,現状のバイオマス利活用に関する課題と今後の方向性について議論した.

 本企画セッションでは,前述した背景を基に,今後のバイオマス系廃棄物利活用の大きな指針になると考えられるバイオマス利活用事業化戦略の紹介から,実際に進められている事業の紹介と問題点の提起および当該部会の経緯と今後の方針についてのご講演をいただいた.

講演の部では,7府省により策定され9月に発表されたバイオマス利活用事業化戦略について,その中心的役割を担っている農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課課長野津山善晴氏から,その背景と目的,概念の紹介があった.非常にホットな話題を担当者ご自身から実際に聞くことができた非常によい機会となり,当部会の今後の活動方針を考える上で有益であった.次に,JFEエンジニアリング(株)都市環境本部副本部長・常務執行役員関口真澄氏から,固定価格買取制度に関連したバイオマスを利活用する最新の事業紹介があった.講演の中で,現状の課題と方向性が具体的に述べられ,技術論のみでなく,同時に社会システムや法制度の議論の必要性が浮き彫りとなった.また,当部会の前々部会長である岐阜大学教授高見澤一裕氏からは,部会発足の経緯からこれまでの10年間の取り組みを総括していただいた.具体的には,部会で十分にカバーできなかったトピックスやバイオエネルギーに関する研究に対する問題点をこれまで投じられた経費の観点から述べられた.最後に,今年度に就任した部会長(三年任期)である山梨大学教授金子栄廣氏からは,部会の現状について説明があり,これまでの当部会の課題,そして,今後の方針と会員への協力の依頼があった.この中で,これまで部会から部会員への一方通行のみであった情報発信を,部会員からも意見を受ける体制を整え,様々な情報を双方向に発信していけるようにしたいとの方針が打ち出された.それには,まず部会の活動を理解していただき,部会員の参加意識を向上させる仕組みづくりがまず肝要であると認識させられた.総合討論の部では,時間が限られている中,現状の課題(処理業の許可や廃棄物自体を品質管理する取り組みの必要性)が挙げられ,本研究部会が会員と行政との橋渡しを担うことができ,学会としての役割を発揮できることが改めて認識させられるものとなった.本企画セッションでは,約130名の方々に,多方面からご参加いただいた.この多様性を持つ廃棄物資源循環学会と各省との連携方法を模索するきっかけとなるセッションであったとも感じている.

本企画セッションの配布資料は,当該研究部会の10周年記念誌ともなっている.電子版として改訂したものは,バイオマス事業化戦略の詳細から当部 会のこれまでの経緯および今後の方向性までを取りまとめている.必要な方は当該部会までお申し出いただきたい.ぜひこれを基に,当該部会の活性化にご協力願い,社会におけるバイオマス系廃棄物利活用の重要性を拡大させていくことができればと願っている.また,このためには,本部会は,広範囲の分野に亘っているため,他部会との連携も視野に入れ,技術に特化するのではなく,社会システムや法制度も含めた議論を展開する必要があると感じている.

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