【論  文】

廃棄物層内での分解反応を伴うトリクロロエチレン輸送に関する研究

田 中 信 寿*・李 東  勲**・松 藤 敏 彦*・神 山 桂 一*

【要 旨】 有害有機化合物の一つであるトリクロロエチレン(TCE)は非イオン性有機化合物に分類され,固体との反応において特異性を持つ。廃棄物処分場はそれらによる地下水汚染の発生源の一つである。これまで埋立層内での非イオン性有機化合物の挙動に関する研究はほとんどなく,筆者らはTCEを用いて一連の研究を発表してきた。本研究は粒径4mm以下の焼却灰及び破砕不燃ごみと水中のTCEとの分解・収着反応,及び飽和水流れによる廃棄物層内TCE輸送について研究したものである。廃棄物によるTCE分解の一次反応速度定数は約0.02h−1(焼却灰),0.003h−1(破砕ごみ)と求まったが,この反応には検討の余地がある。分解を伴うTCE輸送を調べるカラム実験を行って並列型TCE収着速度式を用いた解析法とその有効性を示した。両廃棄物に対して瞬間平衡収着率は約0.3,流体本体から固体内の有機物までTCEが拡散する時の移動し易さを示す総括物質移動容量係数は約0.08h−1と求まった。

キーワード: 廃棄物埋立処分,トリクロロエチレン,溶質輸送,収着速度,分解速度

廃棄物学会論文誌,Vol. 1, No.1, pp.1-9, 1990

原稿受付 1990.5.21

* 北海道大学工学部衛生工学科