電気炉還元スラグの水硬性とその利用
桑 山 忠*・本 多 淳 裕**・山 田 優**・三 瀬 貞*
【要 旨】 電気炉スラグは2段階の精錬工程から排出する酸化スラグと還元スラグがある。還元スラグには化学成分の相違によって粉状と塊状のものがあり,粉状還元スラグは製鋼条件と化学成分に支配されるが,大きい水硬性を示す。この研究は還元スラグの水硬性の機構を明らかにし,この水硬性を促進させる添加物を調べ,促進効果の大きい成分を含んだ産業廃棄物と混合してこれらの廃棄物を有効に利用することを目的としている。還元スラグの水硬性は12CaO・7Al2O3,C-S鉱物の水和反応によって発現し,養生日数の増加とともに促進する。一方,石膏の添加により12CaO・7Al2O3が石膏と反応してエトリンガイトを生成し,水硬性の促進効果が顕著となる。石膏を含む産業廃棄物との混合では還元スラグのみの水硬性の2〜4倍発揮するようになる。
キーワード: 還元スラグ,水硬性,廃棄物利用,結晶構造
廃棄物学会論文誌,Vol. 1, No.1, pp.19-28, 1990
原稿受付 1990.5.9
* 大同工業大学
** 大阪市立大学