【総  説】

廃棄物処理におけるダイオキシン類の生成と制御

平 岡 正 勝*

【要 旨】 昭和58年秋,都市ごみ焼却場の焼却灰やフライアッシュから史上最強の毒物といわれるダイオキシンが検出され,翌年には「廃棄物処理に関するダイオキシン等専門家会議報告」により,当時の知見に基づき一定の判断が示された。しかし,その後はダイオキシン類に関する研究調査の進展は世界的に著しく,また,国内においても,国,地方,大学,業界など,さまざまなレベルで研究が行われてきた。筆者も厚生省委託の研究会に委員の一人として参加し,都市ごみ焼却施設からのダイオキシン類の発生実態や生成機構などの究明に努めてきた。本稿では,その中で得られた調査結果に欧米諸国を中心とした多くの研究成果を踏まえ,発生源,環境汚染,生成機構,分析方法,排出状況など,廃棄物焼却におけるダイオキシン類問題について国内を中心に要点を取りまとめて紹介した。

キーワード: 廃棄物処理,都市ごみ焼却,ダイオキシン

廃棄物学会誌,Vol. 1, No.1, pp.20-37, 1990

原稿受付 1990.6.15

* 京都大学工学部教授