【特 集 :廃棄物,21世紀への展望】

廃棄物の新たなスタート点に立って

小 林 康 彦*

【要 旨】 生活,産業両面から排出される廃棄物は,量の増大,質の多様化により,その処理に困難が生じ,行き詰まりが見られるなど社会的問題になっている。一方,焼却施設や最終処分場など処理施設の整備は最近いっそう困難となっている。こうした現状を概観し,今日までの制度の変遷をその基本的考えを中心に追った上で,新たな廃棄物処理の方向を生活環境審議会の答申にそって紹介した。今後の廃棄物対策の基本に,従来の適正処理に加え,廃棄物の発生の抑制や資源化・再利用の促進を図ることを据え,生産,流通,消費に至る各段階で廃棄物の減量化への努力と,処理にあたっての配慮を行う必要がある。また,地域の生活環境と調和し,地域住民の理解を得られるような処理施設の設置のための方策を確立すること,さらに,適正処理確保のための規制の強化を図ることが提言されている。今後,廃棄物計画のあり方と手法開発,産業廃棄物の処理レベルの向上策,有害廃棄物の処理システムの整備についての検討が期待される。

キーワード: 行政,廃棄物処理法,生活環境審議会

廃棄物学会誌,Vol. 2, No.1, pp.9-20, 1991

原稿受付 1991.1.7

* 厚生省生活衛生局水道環境部長