【特 集 :廃棄物,21世紀への展望】

技術の向こうにあるものゴミ危機についての一記者の雑感

本 田 雅 和*

【要 旨】 大都市におけるゴミ危機は都市文明にとって「死にいたる病」だが,解決のための絶対的技術などはない。市民にモラルを押しつけるより,資源循環型社会をつくるためにまず,ゴミを大量生産するような使い捨て社会の経済と産業の構造を変えていかねばならない。欧米には「ポスト焼却炉」に向けて様々な取り組みがあるが,結局のところ,巨大都市をコミュニティに分割して自立させ,地域ごとのゴミ質に応じオールタナティブな技術のオプションを組み合わせながら,リサイクルを増やしていくしか生き残る道はない。にもかかわらず,日本の科学者や行政は,大企業に依存したり,焼却炉メーカーの既得権益と癒着することにより,既存技術への批判力を減退させ,技術革新,開発への取り組みをおろそかにし,技術の向こうにあるものを見失いつつあるのではないか。

キーワード: ゴミ危機,資源循環型社会,ポスト焼却炉,オールタナティヴな技術

廃棄物学会誌,Vol. 2, No.1, pp.29-35, 1991

原稿受付 1990.10.18

* 朝日新聞社 記者