【総  説】

し尿処理の課題と展望

真 柄 泰 基*・黒 沢 義 乗**

【要 旨】 し尿処理施設は全国で約1,200ヶ所存在し,約4,200万人に相当するくみ取りし尿と約3,000万人に相当する浄化槽汚泥を処理している。このようにし尿処理施設は直接・間接的に国民の過半数のし尿を処理しており公衆衛生の保持に不可欠なものとなっている。また,公共下水道の整備は遅々としており,今後ともその役割は非常に大きい。そこで,感染症対策としてのし尿処理施設から公共用水域の水質保全のためのし尿処理施設へと変化していく過程での効用を歴史的に論じた。さらに今後とも生活環境の保全目標が高まることを意図して開発された膜分離高負荷生物脱窒素処理技術の概要を記した。そしてそれ等を総括してし尿処理技術の開発をする上での方向を論じた。

キーワード: し尿処理,感染症対策,生物脱窒素処理,膜分離高負荷脱窒素処理,処理費用

廃棄物学会誌,Vol. 3, No.1, pp.39-46, 1992

原稿受付 1991.12.2

* 国立公衆衛生院衛生工学部 部長

** 国立公衆衛生院衛生工学部 主任研究官