【論   文】

廃棄物埋立処分場浸出水に含まれる変異原物質の特性

鯉川(武藤)寿美子*・染 谷   孝**・立 藤 綾 子*・松 藤 康 司*・花 嶋 正 孝*

【要 旨】 廃棄物埋立処分場の浸出水に含まれる主要な変異原物質の特性を明らかにするため,浸出水のジクロロメタン抽出物についてAmes法による変異原性試験を行い,5つのテスター菌株に対する作用及びラット肝ミクロソーム画分(S9)による代謝活性化の影響について検討した。浸出水試料36点のうち12点(33%)はSalmonella typhimurium TA98とTA100の両方に対して,また3点(8%)はTA98に対してのみ活性を示し,しかもその多くはS9を必要としなかった。さらに,強い変異原活性を示した試料について詳細な検討を加えたところ,いずれもTA1537に対して変異原性を示したが,TA1535及びTA1977には変異原性を示さなかった。また,S9の添加濃度が高くなるほど活性は減少した。以上の結果から,浸出水中の主要な変異原物質はサルモネラ菌に対して共有結合によってフレームシフト型の変異を起す直接変異原物質であり,またS9によって一部は失活するものであることが示唆された。

キーワード: 埋立処分場,環境微量汚染物質,浸出水,廃棄物,変異原性

廃棄物学会論文誌,Vol. 3, No.3, pp.51-60, 1992

原稿受付 1992. 2. 25

* 福岡大学工学部

** 産業医科大学医療技術短期大学微生物学教室

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武藤寿美子