【技術報告】

し尿処理水等において無機性窒素がCOD(Mn)値に及ぼす影響

林   伸 幸*

【要 旨】 水質汚濁の判断基準であるCOD(Mn)に対する,NO2-Nの影響及び分析誤差について実験的検討を行った。NO2-Nのような還元性無機物質の酸素消費量をCOD(Mn)としてカウントすべきかどうかという議論は,汚水を処理する立場と,環境を保全する立場で全く違ってくるから,この議論は別として,今回の実験によってこのNO2-NがCOD(Mn)にどう影響しているのかが定量的に判断できた。また,ほとんどの汚水に対してKMnO4による酸化反応は,その反応中に残存するKMnO4の量に比例するという現象により,COD(Mn)値に系統的誤差を生じさせており,またその誤差の程度が確認できた。今回の実験では,分析結果として現われたCOD(Mn)値に補正係数を設定することが,COD(Mn)分析についてのトレーサビリティ体系を確保し,分析結果の信頼性・整合性を所要の水準に保持するために有効であることが分かった。

キーワード: COD(Mn),NO2-N,系統的誤差,補正係数,逆滴定値

廃棄物学会誌,Vol. 4, No.1, pp.84-89, 1993

原稿受付 1992.7.23

* 氷上多可衛生事務組合技術課 検査係長(環境計量士)

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