【論  文】

埋立廃棄物層における汚濁物質の質変換現象に関する実験的研究

李   南 勲*・楠 田 哲 也*・島 岡 隆 行**・松 藤 康 司**・花 嶋 正 孝**

【要 旨】 埋立廃棄物層に含まれている汚濁物質を分解させ埋立地の安定化を促進させるために,廃棄物層が持つ浄化能力を活用することは有意義である。廃棄物層の物理化学的および生物学的浄化能力は廃棄物の性状や埋立工法によって大きく異なり,特に,廃棄物層の厚さは浄化能力に大きく影響を与えるものと考えられる。本報では,廃棄物層厚が2.0m,4.0m,6.0m,8.0mの準好気性埋立模型槽を用い,廃棄物層厚が汚濁物質の分解に及ぼす影響並びに,廃棄物層内での汚濁物質の浄化現象を明らかにするために焼却灰を主な充充填物とした廃棄物槽を用いて実験を行った。その結果,廃棄物層厚が大きいほど単位廃棄物質量当たりのTOCの浸出水への流出量が小さく,層内部で良く除去されているものと推測された。一方,T-Nは6.0mの層厚までは,廃棄物層厚が大きいほど流出量が小さくなるが,それ以上層厚が大きくなると廃棄物層内での除去は層厚ほど期待できない結果が得られた。また,廃棄物層内浸透水のTOCおよびT-Nの鉛直方向濃度分布は,温度とpHに起因する特異的なTOCおよびT-N濃度分布が形成されていると推測された。

キーワード: 廃棄物,最終処分,埋立層厚,浸出水,汚濁物質

廃棄物学会論文誌,Vol. 4, No.2, pp.53-63, 1993

原稿受付 1992.6.23

* 九州大学工学部

** 福岡大学工学部土木工学科水理衛生工学実験室

連絡先:〒814-01 福岡市城南区七隅8-19-1

福岡大学工学部 花嶋正孝