【論  文】

埋立廃棄物層における水分および保存性物質の挙動に関する研究

李   南 勲*・楠 田 哲 也*・島 岡 隆 行**・花 嶋 正 孝**

【要 旨】 本報では,生物分解性物質の廃棄物層内での質変換機構解明の基礎資料にするため,実際の埋立廃棄物層厚に近い大きさの準好気性埋立模型槽を用い,不飽和条件下で保存性物質であるCl−の挙動を実験的に検討するとともに,埋立廃棄物層における不飽和流れの水分移動と溶質移動の現象をそれぞれモデル化し,Cl−を対象に数値計算によりこれらのモデルの妥当性の検証を行った。その結果,埋立廃棄物層における水分移動は,不飽和透水係数を液相の流動域体積分率の関数とした水分移動モデル式で十分再現可能であり,溶質移動は水理学的分散を考慮した分散型修正二相モデルで精度良く表現し得ることを明らかにした。また,Cl−の挙動に関する数値計算結果から,液相の流動域と非流動域間で生じる交換項が固相の溶解域と液相の流動域間で起こる溶出と同様の役割を果たし,経時的な溶出形態の変化に従い溶出速度係数を2段階に分けるモデルと同等の効果が得られることが示された。

キーワード: 廃棄物埋立地,不飽和水分移動,溶質移動,保存性物質,予測モデル

廃棄物学会論文誌,Vol. 4, No.4, pp.123-132, 1993

原稿受付 1992.10.15

* 九州大学部

** 福岡大学工学部土木工学科水理衛生工学実験室

連絡先:〒814-01 福岡市城南区七隅8-19-1

福岡大学工学部 花嶋 正孝