【総  説】

土壌・地下水汚染の現状と対策

中 杉 修 身*

【要 旨】 1982年の環境庁調査でハロカーボンによる地下水汚染が全国的に見出されたことから,土壌・地下水汚染に対する関心が高まり,ベンゼン,フタル酸エステル,1,4-ジオキサンなど,様々な汚染物質による汚染が次々と顕在化している。土壌・地下水中での汚染物質の存在形態や挙動は,その性状や土壌の状況によって大きく異なる。ハロカーボンは,重い液体であることから深くまで浸透し,帯水層付近に滞留する一方で,揮発性であることから間隙ガス中にも高濃度で存在する。一方,土壌に吸着しやすい重金属は,表層の土壌粒子に吸着して存在する。このような汚染物質の挙動に応じて適切な未然防止や修復対策が求められている。廃棄物の埋立処分は土壌や地下水に近いところに有害物質を投入する人間活動であり,埋立処分地周辺の地下水の定常的なモニタリング,安定型処分地の見直しなど,土壌・地下水の保全にこれまで以上に配慮することが求められている。

キーワード: 土壌・地下水汚染,微量有害物質,汚染実態,修復対策,廃棄物処理

廃棄物学会誌, Vol. 5, No.2, pp.164-173, 1994

原稿受付 1993.11.25

* 国立環境研究所

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