埋立地浸出水に含まれる有機化合物に関する研究
――塩化ビニル製しゃ水シートから溶出する有機化合物――
福 井 博*・田 中 克 彦*・淡 路 宣 男*・平 林 尚 之**・伊 東 富 晴**・小 島 幸 夫*
【要 旨】 廃棄物の埋立地から流出する浸出水には多種類の物質が含まれており,それらの処理を適切に行うことは環境保全上重要な課題である。そこで,しゃ水シートに用いられる塩化ビニルシートから溶出する有機化合物に着目し,溶出液に含まれる物質を検索した結果,可塑剤のフタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP),紫外線吸収剤のチヌビンP,酸化防止剤のビスフェノールAおよび滑剤や安定剤のパルミチン酸,ステアリン酸の溶出を確認した。また,しゃ水工に塩化ビニルシートを用いた埋立地から採取した浸出水中には,塩化ビニルシートから溶出の確認された有機化合物すべての存在が明らかとなった。しかしながら,これらの有機化合物がすべてしゃ水工に用いられたシートから溶出したものか否かは明らかではない。さらに,塩化ビニルシートに可塑剤として添加されているDEHPの溶出様相を調べたところ,水に溶けにくいDEHPのような添加剤は,水に溶けて溶出する量に比べ,塩化ビニルシート表面を水が流動することによって,懸濁状態で溶出する量が多いことが考えられた。
キーワード: 最終処分場,浸出水,塩化ビニルシート,溶出試験,可塑剤
廃棄物学会論文誌,Vol. 5, No.5, pp.175-184, 1994
原稿受付 1994.1.21
* 神奈川県環境科学センター
** (財)食品薬品安全センター秦野研究所
連絡先:〒254 神奈川県平塚市中原下宿842
福井 博