【特 集 :汚染修復と環境監査】

産業廃棄物の不法投棄と土壌汚染――行政的対応の実態と今後の課題――

北 村 喜 宣*

【要 旨】 廃棄物処理法によれば,産業廃棄物の不法投棄に起因する土壌汚染に関して,それが「生活環境の保全上支障(のおそれ)」を生ずる場合には,措置命令を発動して,浄化や除去などを求めることができる。国レベルでは,権限発動基準について統一的な見解は出されていないが,多くの自治体では,最近設定された土壌環境基準を利用する方針である。しかし,環境基準不適合をもって前記要件を満たしたといえるかどうか,投棄者にすでに汚染されていたかもしれない土地の浄化責任をすべて負わせるのが妥当かなど,具体的ケースにおいては,検討すべき課題が多い。不法投棄物件とそれから波及的に生ずる土壌汚染・地下水汚染とは,異なった条文上の対応が必要ではないか。また,土壌汚染については,廃棄物処理法など個別法の法益の範囲で対応するのではなく,原因行為の態様の如何にかかわらず,一般的な土壌汚染防止法規での対応も検討されるべきではないだろうか。

キーワード: 不法投棄,土壌汚染,地下水汚染,土壌環境基準,措置命令

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.375-381, 1994

原稿受付 1994.9.6

* 横浜国立大学経済学部 助教授

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