【特 集 :汚染修復と環境監査】

ドイツにおける土壌汚染対策制度の現状と課題

――土壌保全法案の制定作業とその概要――

高 橋   滋*

【要 旨】 土壌汚染が深刻な問題となっているドイツでは,連邦の廃棄物処理法や水管理法,各邦の警察・秩序法等を通じて土壌汚染対策が進められている。しかしながら,これらの制度は土壌汚染防止の制度としては不十分であること,各邦の制度に不備・不統一がみられること,複数の理論的問題が未解決なこと等により,連邦法である土壌保全法の制定を要請する声が強い。連邦環境省は1992年に同法の制定準備に着手し,1994年6月現在,同年2月作成の草案が各省庁間の協議に委ねられている。同草案の内容は,土壌汚染防止制度の確立,汚染調査・浄化制度の統一,費用負担問題の立法的解決等の点で大きな意義を有するものであり,わが国における市街地土壌汚染対策制度に対して参考となる点は多い。

キーワード: アルトラスト(汚染された跡地),土壌汚染,土壌保全,土壌浄化,ドイツ法

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.394-406, 1994

原稿受付 1994.9.8

* 一橋大学法学部 助教授

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