【特 集 :汚染修復と環境監査】

土壌汚染における浄化措置費用をめぐる問題点

植 木   哲*・木 村 俊 郎**

【要 旨】 土壌汚染の浄化措置にかかわる費用に関して,環境基本法37条および公害防止事業者負担法4条は,汚染者負担の原則を規定している。この汚染者負担は,負担総額の減額措置により,基本的に公用負担としての性質を帯びている。浄化措置執行者としての国または地方公共団体は実施費用を負担事業者へ償還請求することになる。しかし,この償還請求に関連して,若干の問題がある。本稿は,土壌汚染の完全な浄化を目指して,浄化措置費用の償還問題を検討する。検討方法は,一方で,わが国の浄化措置にかかわる償還問題の現状を明らかにし,他方で,アメリカのCERCLA法が規定する,浄化措置費用の償還の仕組みや,償還できる浄化措置費用の範囲などを具体的に検討する。最後に,比較法制研究の観点から,費用償還のあり方を素材として,土壌汚染の完全浄化責任のあるべき姿を検討する。

キーワード: CERCLA法,汚染者負担原則,土壌汚染,連邦環境保護庁,浄化措置(費用)

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.418-426, 1994

原稿受付 1994.9.7

* 関西大学法学部 教授

** 関西大学法学部 非常勤講師

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関西大学法学部 植木 哲