【特 集 :汚染修復と環境監査】

「具体的な」環境監査――わかりやすく,「系」と「環境」の理念から――

早 瀬 光 司*

【要 旨】 本小論では,ここ数年のうちに主要な話題に上がってきた環境監査について,具体的に解かりやすく解説を試みた。現在,環境監査は発展途上にあり,その理念,方法,効用などについて,具体的に明確な一致点や定義が存在するわけではない。このことが環境監査を解かりづらくしている。ただし,一般的な表現としては「企業などの組織体が,地球環境を保護するために,その行動をいかに果たしているかの実態を,系統的に評価,公表,改善するための手法である」といえる。まず,環境監査のこれまでと現状を簡単に述べた後,「系」と「環境」の理念を提示した。次に,「系」と「環境」との関係として,導入部,加工・生産部,送出部の各区分の重要性を示した。さらに,「系」=「社会システム」と「環境」との間でやりとりされる項目を綿密に記帳する物質とエネルギーの収支計算書,すなわち,環境収支簿記を提案した。最後に具体例として,スイスの製造企業と東京にある企業の事務所を取り上げ,環境収支簿記を例示し,その解かりやすさ,地球環境保全への有効性,実効性を示した。

キーワード: 環境監査,系と環境,導入と送出,エコロジー簿記,環境収支簿記

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.427-435, 1994

原稿受付 1994.8.31

* 広島大学大学院生物圏科学研究科 助教授

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