【特 集 :汚染修復と環境監査】

事業活動による環境負荷の自主的管理の手法

――環境監査制度についての一検討――

浅 野 直 人*

【要 旨】 環境基本法は,「環境負荷の低減」を新たな環境政策のキーワードの一つとしたが,その実現のためには,従来の規制手法のみならず,当事者の自主的協力が必要である。このうち事業者についてはこれまで公害防止管理者制度や事業アセスメントなどのシステムがこれを支援してきた。しかし,事業活動に伴う汚染物質排出削減だけでなく,原料の採取・使用や原料・製品の輸送,さらには製品使用や廃棄の各段階での負荷の低減が求められるところであり,各段階での環境負荷の予測や総合的な管理を事業者に自発的に行わせるための「環境監査」制度が注目されつつある。ただし,このシステムの日本での導入を促進するためには,性急な法制化の論議よりも,監査における評価基準の検討など,その導入と適切な実施のための条件整備に関する研究や論議を進めることが必要である。

キーワード: 環境監査,環境管理,環境基本法,事業者の責務,ライフサイクルアセスメント

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.436-440, 1994

原稿受付 1994.10.27

* 福岡大学法学部 教授

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