【研究報告】

集じん灰バンカー爆発事故の教訓

高 月   紘*

【要 旨】 今から11年前に起きたあるごみ焼却炉の集じん灰バンカーにおける爆発事故をめぐる裁判がやっと終了した。この事故では,職員が半身不随の重傷を負ったが,その爆発原因はどうやら集じん灰から発生した水素ガスによるものと判明した。集じん灰中の金属アルミニウムとアルカリ剤と水との混合によって発生する水素ガスは条件によっては充分爆発限界内に入ること,また集じん灰が湿ると酸素を急速に消費し,酸欠事故につながる心配があることが今回の事故から得た教訓である。ごみ焼却炉の集じん灰は,特別管理一般廃棄物に指定され,その貯留,保管の体制が厳しくなったが,その際,集じん灰のもつ上記のような性質には充分注意を払う必要がある。

キーワード: 集じん灰,爆発,水素ガス,金属アルミニウム,酸欠事故

廃棄物学会誌,Vol. 5, No.5, pp.441-448, 1994

原稿受付 1994.6.1

* 京都大学環境保全センター 教授

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