【特 集 :揮発性有機化合物(VOC)と廃棄物】

わが国の有害大気汚染物質対策の現状と今後の課題

柳 下 正 治*

【要 旨】 わが国において,有害大気汚染物質が大気中から検出されており,その長期的暴露による発ガンを含めた健康影響が懸念されている。欧米では,1980年代後半から有害大気汚染物質に対する体系的な対策が開始されており,わが国としても,有害大気汚染物質による影響の未然防止を目指した総合的な対策の確立が急務である。環境庁においては,1994年4月,有害大気汚染物質対策検討会を設置し,プライオリティリストの作成,健康影響,モニタリングおよび発生源インベントリーに関する調査検討を実施しているところである。これらの検討結果を踏まえ,わが国として推進すべき有害大気汚染物質に対する総合的な対策の方向を取りまとめることとしている。

キーワード: 有害大気汚染物質,低濃度長期暴露,未然防止,リスク低減,プライオリティリスク

廃棄物学会誌,Vol.6, No.1, pp.3-12, 1995

原稿受付 1994.12.7

* 環境庁大気保全局大気規制課 課長

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