【論  文】

高温熱水によるポリ塩化ビニル廃棄物の脱塩素化処理

榎 本 兵 治*・畠 山 厚 志**・加 藤 義 重***

【要 旨】 ポリ塩化ビニル廃棄物の新しい処理方法として,高温熱水中において脱塩素化を行う方法について検討した。その結果,金属鉄あるいはアルカリの存在のもとに,300℃の亜臨界高温熱水中では1時間程度の反応時間で,また250℃では20時間程度で,ほぼ100%の脱塩素化が可能であることがわかった。さらに,金属鉄のみの存在下では主に置換反応による脱塩素化が進行し外見上高分子の分解反応の進行はほとんど認められず,反応後には溶融固化した固体が得られること,および,アルカリのみの存在下では分解反応と脱塩素化反応が同時に進行し,反応生成物のほとんどが水溶性あるいは非水溶性液体となり固体残さは極めて少ないことがわかった。また,金属鉄とアルカリが共存する場合,亜臨界では主に脱塩素化反応が進行し分解反応は抑制されるが,超臨界では分解反応も速やかに進行する。本方法は,感染性医療系廃棄物の施設内処理に要求される滅菌処理方法として「医療廃棄物処理ガイドライン」に沿ったものであり,プラスチック製医療系廃棄物の施設内処理方法としても有効と考えられる。

キーワード: 廃棄物処理,ポリ塩化ビニル,亜臨界,水熱反応,医療廃棄物

廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.1, pp.16-22, 1995

原稿受付 1994.3.8

* 東北大学工学部 教授

** 東北大学大学院工学研究科院生(現日本石油開発(株))

*** 資源環境技術総合研究所水圏環境保全部 室長

連絡先:〒980 仙台市青葉区荒巻字青葉

榎本 兵治