【論  文】

下水汚泥溶融スラグを原料とするガラスの作製と物性評価

松 下 和 正*・白 垣 信 樹*・佐 藤 隆 士*・小 松 高 行*・桃 井 清 至**

【要 旨】 下水汚泥スラグの溶融処理により生成するガラスの物性と化学組成,特に鉄イオンの状態との関係を詳しく検討した。一般のガラスと比べると,スラグより生じたガラスは非常に多量の酸化鉄を含有し,そのため強く着色し不透明である。またアルカリ酸化物含量が少なくアルミナを多く含むため,アルミノ珪酸塩ガラスに近い物性値を示している。ガラス中のFe2+イオンの定量分析をセリウム滴定法により行った。スラグに炭素粉末を混合溶融することによりガラス中のFe2+/(Fe2++Fe3+)比を調整することができた。Fe2+が多くなると熱膨張係数が大きくなり,密度,ガラス転移温度および粘度が低下することが明らかになった。

キーワード: 下水汚泥スラグガラス,鉄イオン,粘度,熱分析,酸化還元平衡

廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.2, pp.66-72, 1995

原稿受付 1994.7.8

* 長岡技術科学大学・化学系

** 長岡技術科学大学・環境系

連絡先:〒940-21 新潟県長岡市上富岡町1603-1

長岡技術科学大学・化学系 松下 和正