廃棄物埋立処分地の環境評価に関する土壌生物科学的研究の試み
――主として土壌・植生・土壌生物相からの展開――
松 本 貞 義*
【要 旨】 各種廃棄物によって海面および中山間地の谷間を埋立て造成した人工の土地について,土壌生物環境科学の立場から,土壌とその立地利用に関する環境評価のあり方を,これまでに得た調査研究結果を基に解説と提言を試みた。人工の埋立て造成地であっても,それは自然環境あるいは土壌環境要因としての機能や作用が十分に発揮されることが求められる。調査結果からは,埋立て造成地における生物相およびその現存量(バイオマス)は貧弱であった。そして,それに伴う土壌の生物化学的活性も低調であった。また,土壌環境機能を回復させる重要な物質である土壌有機物の生成が土壌動物の現存量とその摂食排糞活動等に見られる生物作用と密接に関わっていた。以上のような諸結果を基に,本文では埋立て造成地を人工構造物としてではなく,独立した自然環境要因を提供する場としての土壌(環境)であるという認識を前提に論述した。
キーワード: 廃棄物埋立地,土壌生物環境,土壌動物,土壌の生物化学的活性,土壌有機物
廃棄物学会誌,Vol. 6, No.2, pp.153-161, 1995
原稿受付 1994.9.12
* 近畿大学農学部農芸化学科
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