焼却灰溶出液中における硫酸塩還元反応への影響因子に関する研究
宮 脇 健太郎*・田 中 信 寿*・松 藤 敏 彦*
【要 旨】 日本では可燃ごみの70%以上が焼却され,最終処分場は焼却灰および不燃ごみ主体の埋立地となってきている。灰中には重金属が濃縮されており,環境中へ流出する可能性を持つ。しかし,埋立地内には嫌気部分が存在し,灰は硫酸塩を多く含有しているので,硫酸塩還元細菌(SRB)によって,重金属が硫化物として固定される可能性がある。そこで本研究では焼却灰埋立層中における硫酸塩還元反応を検討する第一段階として,灰溶出液中における硫酸塩還元反応の環境因子を検討した。その結果,灰溶出液における環境因子の影響は既往の研究のものとほぼ同じであり,条件が整えば硫化物生成が起きることがわかった。硫酸塩やTOCが残っているにも関わらず反応が停止したが,本実験に用いた土壌植種液中のSRBは乳酸資化性であり,灰溶出液中の有機炭素の約25%が乳酸経由で利用されたにすぎなかったからである。
キーワード: 硫酸塩還元細菌,焼却灰,重金属固定,灰溶出液
廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.3, pp.95-104, 1995
原稿受付 1994.8.19
* 北海道大学工学部衛生工学科
連絡先:〒060 札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学工学部衛生工学科 田中 信寿