無機塩類が埋立層内の微生物分解過程におよぼす影響
立藤(田中)綾子*・松 藤 康 司*・花 嶋 正 孝*
【要 旨】 焼却残渣主体の埋立地の高塩類化に伴う埋立地内の微生物分解過程への影響について小型埋立模型槽を用いて検討した。その結果,埋立地の高塩類化によって廃棄物の分解および浸出水の浄化は抑制されるものの,廃棄物層内には外的環境と接触し難い部分が多数存在しているため,その影響は比較的小さかった。特に,不燃物ではそれ自身が塩類を高濃度に含有しており,高塩性細菌群が多数存在していることと廃棄物層内に団粒構造様の微細な孔隙が存在しているために,新たに高塩環境が付加されても廃棄物層内の細菌への影響はほとんど認められなかった。また,浸出水中の細菌群は塩濃度が高くなると高塩性細菌群主体の細菌相へ遷移し,菌数の減少はほとんど認められなかった。しかし,浸出水中の細菌群の有機物分解活性は塩濃度が高くなると低下した。特に,脱窒菌は浸出水中ばかりでなく,廃棄物層においても高塩環境下ではその生育が抑制された。このために,高塩環境下においては浸出水中の窒素成分は炭素成分に比べて減少し難いことが明らかになった。
キーワード: 埋立地,微生物分解,無機塩類,浸出水,廃棄物層
廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.3, pp.105-114, 1995
原稿受付 1994.8.18
* 福岡大学工学部土木工学科水理衛生工学実験室
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福岡大学工学部
立藤(田中)綾子