【特 集 :一般廃棄物とエネルギー利用】

海外におけるごみ発電の状況,とくにボイラの状況を中心にして

折 田 寛 彦*

【要 旨】 欧州では,1960年代にごみ発電が普及し始めたが,ボイラ水管の高温腐食によるトラブルが多発したため,ごみの燃焼方法,ボイラ構造,ボイラ水管の保護方法や材料等について種々の改良が行われた。この後,米国では欧州で改良された技術を導入して,1970年代の後半から大規模なごみ発電所の建設に取組みだした。欧州でも,近年になってからごみが再生可能なエネルギー源として見直され,ごみ発電に力を入れ始めた国が増加している。ごみ焼却炉ボイラは一般の化学燃料用ボイラと比べて,非常に厳しい腐食環境下にあり,火炉を構成する水冷壁管およびスーパヒータ管に損傷を受けることが多い。水冷壁管の腐食防止には,耐火材料によるライニングが欧州で早い時期から実用化され,近年は高合金の溶接肉盛が,米国で広く適用されるようになった。また,スーパヒータ管の腐食防止には,蒸気温度が初期の500℃台から450℃以下に落とされたことと,スーパヒータ部のガス温度を650℃以下とするなど,スーパヒータ管のメタル温度を下げる方策がとられた。一方で,ボイラ構造面の改良も続けられており,耐久性の大きなテールエンド型ボイラや,パネル型スーパヒータ(高温ガス領域)を用いたコンパクト型ボイラ等が,今後,普及するものと見られる。

キーワード: ごみ発電所,ごみ焼却炉,ごみボイラ,エネルギ回収,高温腐食

廃棄物学会誌,Vol. 6, No.3, pp.229-241, 1995

原稿受付 1995.4.12

* 三菱重工業(株)技術本部横浜研究所 環境装置研究推進室 主査

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