【総  説】

資源・エネルギーからみた乾電池の問題点

村 田 徳 治*

【要 旨】 乾電池は,環境汚染や資源枯渇が問題視されている重金属やその化合物から構成されており,持続可能な社会を構築する上でエネルギー効率や資源的な視点から,乾電池のエネルギー収支を試算した。その結果,マンガン乾電池は,その原料である金属亜鉛・電解二酸化マンガン・鉄を製造するために消費したエネルギーのたった0.3%以下しか利用することができず,残りの99.7%はエネルギーの無駄使いになっていた。また,効率が良いとされているアルカリマンガン乾電池ですら,エネルギー効率はわずか0.6%以下であった。製造に関する基礎的なデータはメーカー側に握られており,試算のための基礎資料の入手は困難であった。産業側が秘匿している基礎データの開示とデータベースの充実により,科学的なデータに立脚したLCAが実施される必要がある。

キーワード: 乾電池,資源,エネルギー効率,亜鉛,マンガン

廃棄物学会誌,Vol. 6, No.3, pp.242-250, 1995

原稿受付 1995.1.9

* 循環資源研究所 所長

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