【論  文】

紙資源の循環再利用と廃棄物処理

――紙資源リサイクルの資源・費用・エネルギー分析の試み――

森 澤 眞 輔*・長 谷 川  健**・井 上 頼 輝***

【要 旨】 わが国における紙資源のライフサイクルを評価するために構築した数学モデルを用いて,紙資源のリサイクルの推進によって,物質としての紙資源の流動がどのように変化するかを解析した。紙資源ライフサイクルの要素プロセスにおけるエネルギー原単位,費用原単位を推定し,ライフサイクル全体の資源消費,エネルギー収支関係や費用収支関係が,古紙リサイクルの推進によって現状からどのように変化するかを定量的に検討した。古紙の資源としての回収とエネルギーとしての回収との間にはトレードオフが成立する可能性があるが,熱エネルギーの回収レベルが低い現状では現実的な意味を持たないこと,製紙部門による古紙の買い入れ価格と古紙回収費用の組み合わせによって,製紙部門および廃棄物処理部門の費用負担パターンが異なること,費用負担が減少する部門から増加する部門へ,費用負担の減少分の一部を移す施策を導入することにより,古紙回収が経済的に促進される可能性があること等を明らかにした。

キーワード: 紙資源,ライフサイクルアナリシス,リサイクル,エネルギー分析,費用分析

廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.4, pp.139-148, 1995

原稿受付 1994.11.29

* 京都大学工学部 教授

** 京都大学大学院 修士課程学生

*** 京都大学工学部 教授

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京都大学工学部衛生工学教室 森澤 眞輔