【論  文】

都市ごみ焼却飛灰中の鉛と埋立処分地での浸出特性に関する研究

長谷川 信 夫*

【要 旨】 一般廃棄物を焼却処理した場合,塩化ビニルからの塩素の問題が生じているが,同時に安定剤としてかなり多量に含まれている鉛はヒューム(酸化鉛)を形成するが,それは飛灰中に含まれることになる。この飛灰の溶出試験をするとかなりの鉛が検出されているが,この埋立地の浸出水には鉛は検出されない。そこで,覆土への鉛の吸着と脱着について研究したものである。鉛イオンの吸着はFreundlichの式に従うこと,そしてpHによって吸着能には,大きな差のあることが分かった。さらに,焼却により生成した酸化鉛は,両性化合物なので中性付近では水に難溶解性であるが,強アルカリや強酸性ではイオン化するため,吸着能に大きく影響を与えることが認められた。一方,燃焼ガス中の塩化水素処理のため消石灰を加えているので,飛灰中に過剰な消石灰が残存することになる。そのため,埋立処分地では降水などにより加水されるとpHは高くなるため,この酸化鉛の多くはイオン化して流下し,これが覆土などに吸着される。一方,pHの低下に伴い酸化鉛や水酸化鉛として,覆土に単に物理的に吸着などされるために浸出水中には検出されないものと推察される。しかし,これらの鉛の吸着力は弱いために,条件さえ整えば脱着する可能性が高いので,十分な監視とチェックが必要なことを指摘した。

キーワード: 飛灰,鉛,溶出試験,廃棄物埋立地,吸着

廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.4, pp.149-156, 1995

原稿受付 1994.8.22

* 東北学院大学工学部 教授

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