余剰汚泥の可溶化および嫌気性消化に及ぼす前処理の影響
汪 群 慧*・柿 本 幸 司*・尾 川 博 昭*・藤 崎 一 裕*・加 藤 安 彦*
【要 旨】 嫌気性消化過程の効率化を目的として,余剰汚泥に対して超音波処理,熱処理および凍結処理を施し,それぞれの前処理条件を詳しく検討した。各前処理により可溶性タンパク質,炭水化物などの有機物が余剰汚泥から溶出され,その溶出量がメタン発生量に大きく関与していることがわかった。30分間超音波処理した汚泥のメタン発生量は60%以上増加し,低温熱処理(60℃)の場合にもメタン発生量は顕著な増加が見られ,エネルギーの面から見ても有利である。また,前処理した余剰汚泥と種汚泥の混合比の嫌気性消化に及ぼす影響を検討した結果,前処理した汚泥中に可溶性有機物が多量に溶出しており,酸発酵が進んでいた。揮発性脂肪酸を蓄積しない濃度にするため,種汚泥の割合を大きくしたほうがメタン発酵の効率はさらに向上する。
キーワード: 余剰汚泥,前処理,可溶化,嫌気性消化
廃棄物学会論文誌,Vol. 6, No.4, pp.157-164, 1995
原稿受付 1995.2.24
* 九州工業大学工学部物質工学科 教授
連絡先:〒804 福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1加藤 安彦