【特 集 :埋立管理とバイオモニタリング】

処分場浸出水の変異原性

染 谷   孝*

【要 旨】 廃棄物埋立処分場における土壌・地下水汚染を防止するためには,浸出水中の未知の有害物質を検出しその毒性を評価することが必要である。その手法として,細菌を用いたバイオアッセイである変異原性試験(エームス試験)が近年注目されており,その原理・調査例・意義などに関して解説した。変異原物質の約80%は発がん物質であり,変異原性試験は,発がんに関わる短期スクリーニング試験と位置づけられる。廃棄物埋立期間中の浸出水からは変異原性が検出されることがあり,しかも浸出水の浄化処理により,変異原性がいっそう高まる現象が認められた。これは,廃棄物中に存在する変異原物質の前駆体が,浸出水中の細菌の好気的代謝によって変異原物質に変換されたものと考えられる。浸出水中のこのような変異原物質の挙動の解明を通して,その無害化処理法や除去対策が検討されている。

キーワード: 埋立処分場,汚染物質,浸出水,都市ごみ,変異原性

廃棄物学会誌,Vol. 6, No.4, pp.285-293, 1995

原稿受付 1995.7.5

* 佐賀大学農学部応用生物科学科 助教授

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