【論  文】

水害時における一般廃棄物処理と処理システムのリスク軽減

森 澤 眞 輔*・田 中 佐世子**・井 上 頼 輝***

【要 旨】 長崎大水害を対象にして,廃棄物処理システムが直接的・間接的に被害を被る場合に,災害ごみを含めて廃棄物流動がどのように変化するかを評価するための数学モデルを構築した。水害後に実際に採用された廃棄物対策がそれぞれ講じられない場合を想定し,廃棄物流動をシミュレーションにより推定し,講じられた対策の効果を評価した。本研究により得られた主要な結論を要約すると以下のようになる。(1) 構築した数学モデルは,廃棄物処理システムを構成するプロセスが一時的に機能を喪失する条件下での,廃棄物流動を説明するモデルとして利用することができる。(2) 水害後に採用された廃棄物対策の内では,発生源での廃棄物滞留を早期に解消する面からは,輸送能力の増強や一時保管場の設置等の効果が著しく,仮焼却(野焼き)の効果は大きくなかったといえる。(3) 廃棄物処理システムを構成する各プロセスの処理能力や輸送能力等の増強は,システム内での廃棄物流動が過不足なくバランスするように調整された場合に,その効果が最大になる。

キーワード: 災害ごみ,廃棄物管理,システムリスク,数学モデル,リスク軽減

廃棄物学会論文誌,Vol. 7, No.1, pp.8-17, 1996

原稿受付 1995.7.12

* 京都大学工学部附属環境質制御研究センター

** 日本工営(株)

*** 京都大学工学部衛生工学教室

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附属環境質制御研究センター 森澤 眞輔