【論  文】

ごみ焼却飛灰の無害化処理のための重金属類の溶出要因の検討

福 永   勳*・伊 藤 尚 夫*・澤 地   實**

【要 旨】 新しく改正された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では,その焼却灰のうち飛灰は「特別管理一般廃棄物」に指定され,今後新設工場については厚生大臣が定める4方法による中間処理を講じることになった。著者らは,既設工場においても「廃掃法」の精神に則った対策をとるべく検討し,すでに無害化処理法の一つとしての飛灰の水洗浄法の可能性を明らかにした。水洗浄法とは,ごみ焼却飛灰を灰汚水,最終放流水あるいは工業用水で洗浄し,さらに脱水をして,溶出試験に合格する飛灰は埋立て,重金属などが溶出した洗浄液は通常の排水処理システムで処理をするものである。環境庁告示13号に基づいて,その洗浄した飛灰の溶出試験を行った結果,pHはいずれも9台と,溶出液の重金属濃度はごく低い値で,すべて判定基準に合格した。したがって,この方法は,セメント固化方法などに比べてはるかに簡易で経済的であると考えられ,簡易なごみ焼却飛灰の処理法として採用できる可能性を持っていると考えられた。その後,実用化のために重金属類の溶出要因としてpHの及ぼす影響,溶出時間の影響,飛灰と溶媒の溶解比などの諸条件の実験室的な検討および実工場の実態調査を行った。その結果,(1)洗浄飛灰はpH9〜11となりほとんど溶出しない,(2)海水,淡水について,1年近い長期的溶出を行っても両者に相違なくほとんど溶出しない,(3)無害化処理のための洗浄による溶出は15分もあれば充分である,(4)飛灰:溶媒の比は,1:5以上の溶媒が必要である,(5)水洗浄法はごみ焼却工場の飛灰の中間処理に適用できる,ことが分かった。

キーワード: ごみ焼却飛灰,無害化処理,溶出実験,特別管理一般廃棄物,水洗浄法,重金属

廃棄物学会論文誌,Vol. 7, No.1, pp.28-35, 1996

原稿受付 1995.3.1

* 大阪市立環境科学研究所

** 大阪市環境事業局

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大阪市立環境科学研究所 福永  勳