【特 集 :医療廃棄物をめぐる最近の動向―研究委員会研究活動(医療廃棄物部会)―】

医学研究機関および附属病院における医療廃棄物の適正処理とその課題

松 島   肇*

【要 旨】 医療関係機関などから発生する特別管理廃棄物には,病原微生物によって感染症を生じる恐れのある感染性廃棄物のほか,毒性の強い化学物質を含有する有害性廃棄物が存在することもある。本稿では医療研究機関および附属病院から発生する廃棄物のうち,主として特別管理廃棄物を取り上げて,医療関係機関などの責務,医療廃棄物への対応,その課題と対策について解説する。浜松医科大学医学部および附属病院における廃棄物処理については,特別管理廃棄物である非感染性廃棄物の廃油,廃酸または廃アルカリをそれぞれ排出時点でプラスチック製専用容器に分別した後,施設内で廃油を噴霧燃焼法で焼却処理し,廃酸または廃アルカリはフェライト化法で処理している。感染性廃棄物については施設内外での感染事故を防止するため,液状またはでい状のもの,固形状のもの,鋭利なものに厳格に分別して専用保管場所に貯留し,委託処理にて焼却処理されている。医療廃棄物に対する課題と対策では,鋭利なものによる感染事故の防止,発がん性廃棄物,抗悪性腫瘍剤廃棄物,DNA廃棄物などについて述べた。

キーワード: 医療廃棄物,感染性廃棄物,非感染性廃棄物,感染事故対策,発がん性廃棄物

廃棄物学会誌,Vol. 7, No.1, pp.30-39, 1996

原稿受付 1995.12.28

* 浜松医科大学医学部 助教授(衛生学教室)

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