【総  説】

大気環境保全と廃棄物の処理・処分

浦 野 紘 平*

【要 旨】 最近,大気環境の保全およびこれに関連した有害化学物質の管理について,国内外で大きな動きが始まっている。そこでまず,OECDやUNEPをはじめとする各種の国際機関における大気環境管理と有害化学物質管理に関する動向,および米国やドイツをはじめとする先進諸国の大気汚染管理と有害化学物質管理の制度の現状を紹介した後,日本における国および先進的な自治体の新しい大気汚染管理と有害化学物質管理の動向を紹介した。その上で,廃棄物処理が大気環境保全に貢献している例として,排ガス等から回収された廃溶剤の精製・再利用の実態と焼却分解の実態を示し,大気環境保全政策の推進のためには,廃棄物関係業者の育成が必要であることを論じた。また,廃棄物の収集,運搬,貯蔵,再生あるいは焼却処理および最終処分に伴って排出される揮発性有機物,地球温暖化ガスおよびダイオキシン類をはじめとする遺伝子毒性物質についての現状を示し,改善の必要性と方向を論じた。

キーワード: 大気汚染,有害化学物質,廃溶剤,焼却処理,温暖化ガス,ダイオキシン類,変異原性

廃棄物学会誌,Vol. 7, No.1, pp.58-66, 1996

原稿受付 1996.1.18

* 横浜国立大学工学部 教授

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