【特 集 :廃棄物学会第6回研究発表会】

特別講演 環境倫理学からみた廃棄物

加 藤 尚 武*

【要 旨】 環境倫理学の観点から都市の環境と防災について論じた。廃棄物については,環境倫理学の三つの視点,すなわち,経済外的なものを経済内的なものに組み入れる有限性の視点,生物種の保存という形で人間にとっての有用性を離れても生物を保護するという生態系保全の視点,未来人の生存状況を保証するという責任が現在の世代にあるという世代間倫理の視点を取り入れることが望ましい。これまで効率化をはかるために人,エネルギー,情報,物が全て都市に集約されてきた。一般に能率と安全は両立しないと言われるが,コンピューターネットワークや物流センターの利用,エネルギーについてはコジェネレーションを中心とするシステムができるとすれば今後都市を大きくする必要はない。そして都市そのものが廃棄物になった時に芸術作品と同じように永遠の使用価値をもつような都市作りをすることが望ましい。

キーワード: 都市,防災,廃棄物,環境倫理学

廃棄物学会誌,Vol. 7, No.2, pp.101-109, 1996

原稿受付 1995.12.27

* 京都大学文学部教授

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京都大学文学部 倫理学教室