【論  文】

超臨界流体抽出法による模擬廃棄物試料中有機塩素化合物の抽出特性と実試料への適用

川 本 克 也*

【要 旨】 超臨界流体抽出法による廃棄物中有害物質の最適な抽出方法の確立を目的として,主として模擬廃棄物試料中のクロロベンゼン類を対象に抽出効率と操作条件との関連を実験的に検討した。模擬廃棄物試料では,流体に二酸化炭素を用い,流速を1ml/minとして,30分間抽出を行えば抽出はほぼ完了した。一定温度の下で流体の密度を決定する圧力が,抽出効率に対して大きな影響因子となった。ただし,臨界点近傍より高圧側で抽出効率は増大するものの,単純に圧力の増加には依存しない。温度の影響は圧力ほど大きくはないが観察され,低沸点で熱的に安定な化合物に対しては,揮発効果による抽出効率の向上が期待できる。極性溶媒をモディファイヤーとして添加すると,極性化合物の抽出に対して効果の現われる場合がある。実際の飛灰試料からのクロロベンゼン類の超臨界流体抽出は,溶媒抽出法に比較してまだ不十分であり,抽出効率を向上させる条件の探索が今後の課題である。

キーワード: 廃棄物,飛灰,有害物質,超臨界流体抽出法,クロロベンゼン類

廃棄物学会論文誌,Vol. 7, No.3, pp.152-160, 1996

原稿受付 1995.8.2

* 関東学院大学工学部建築設備工学科

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