【論  文】

高温条件下でのコンポスト化における初期の昇温速度と種菌の添加が有機物の分解におよぼす影響

中 崎 清 彦*・片 岡   稔*・倉 富 英 一*

【要 旨】 コンポスト化初期の昇温速度の変化と添加する種菌(3種類)の違いがコンポスト化過程における有機物分解速度におよぼす影響を定量的に検討した。昇温速度として,室温から設定温度の60℃まで20時間をかけて昇温させる緩速昇温と5時間で昇温させる急速昇温の2通りを設定した。昇温速度の影響は種菌の種類によって異なり,昇温速度にかかわらず有機物が良好に分解して,コンポスト化を促進する種菌,いずれの昇温速度でも有機物の分解が中断して,促進効果が見られない種菌,急速昇温では有機物が良好に分解するが,緩速昇温では有機物の分解を中断する種菌の存在が認められた。また,それぞれの種菌は微生物相が異なり,コンポスト化過程における微生物相の変化も異なっていた。コンポスト化促進の効果が見られる場合には,コンポスト化初期に好熱性細菌が速やかに増殖し,コンポスト化全般に渡って109cfu/g-ds付近の高密度に存在すること,コンポスト化後半には好熱性放線菌が107cfu/g-ds程度にまで増えていたことを確かめた。

キーワード: 廃棄物処理,コンポスト化,有機物分解,種菌効果,微生物

廃棄物学会論文誌,Vol. 7, No.5, pp.225-233, 1996

原稿受付 1995.11.29

* 静岡大学工学部物質工学科 助教授

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