【特 集 :溶出試験】

わが国の溶出試験方法の歴史と課題

淡 路 宣 男*

【要 旨】 廃棄物を埋立等最終処分する場合には,自然環境にとって安全であると判断される廃棄物でなければならない。そこで,処分するために安定化等処理された廃棄物や処分される廃棄物の安全性の判断が必要である。わが国では,法令で有害性のある廃棄物および有害物質を指定して,最終処分の場所と方法によって異なるが,その物質の含有量や廃棄物からの溶出量を規定して有害性を定めている。そのため,廃棄物の安全性や処理効果等を判断する方法として,昭和48年に施行された「産業廃棄物に含まれる有害物質(金属等)の検定方法」(環境庁告示第13号)がある。この告示は,国際的,社会的な動きによる法令改正にあわせて,有害性廃棄物や有害物質の追加指定および検定方法の改訂等,十数回の改正を重ねてこれまで運営されてきている。いまでは,廃棄物の最終処分等を行うための判断基準を得る方法の基本をなしているといえよう。これからも社会・経済の変動に即した対応がなされるものと思われる。ここで,施行以来23年あまりを経過して社会情勢等も大きく変化しているので,これまでに行われた試験実施機関へのアンケート,溶出試験改訂の検討会等をみながら,告示の経緯を整理しておくことに意義があると考える。

キーワード: 溶出試験,検定方法告示の歴史,検定改定の調査・検討,検定方法アンケート

廃棄物学会誌,Vol. 7, No.5, pp.371-382, 1996

原稿受付 1996.8.12

* サンコーコンサルタント(株) 理事

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