溶出試験の基本的考え方
酒 井 伸 一*・水 谷 聡*・高 月 紘*
【要 旨】 焼却灰に関する国際ワーキンググループ(IAWG)の研究成果を中心に,溶出試験の基本的な考え方について述べた。まず,各国の現在の公定溶出試験法について整理し,廃棄物の単位重量当たりの溶出した金属量を示す“溶出量”の考え方と,廃棄物からの溶出量を溶出液のpHに着目して論ずるpH依存性試験について述べた。さらに,最終処分後の最悪の状況下で溶出する可能性のある量(最大溶出可能量)を把握するためのアベイラビリティ試験を紹介し,その一方で,実環境での降雨量と廃棄物容量の比に基づいた,液固比の低い溶出試験についても述べた。これらを踏まえ,現在の告示法を短期的な溶出挙動を把握するための第一段階とし,酸中和容量の低い廃棄物に関しては酸性条件下を,また酸中和容量の大きな廃棄物についてはアルカリ性の条件下での長期的な溶出挙動を把握する2段階の溶出試験の枠組みを提案した。
キーワード: 溶出試験,溶出量,アベイラビリティ試験,pH依存性試験,酸緩衝容量
廃棄物学会誌,Vol. 7, No.5, pp.383-393, 1996
原稿受付 1996.8.22
* 京都大学環境保全センター
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京都大学環境保全センター 酒井 伸一