【論  文】

PCBの化学的脱塩素処理に関する速度論的解析

高 田   誠*・谷 口   紳**・村 上 昭 彦**・細 見 正 明**

【要 旨】 PCBは人体への有害性から,製造および新規使用が禁止され,使用済みのものは保管が義務付けられている。長期保管による容器の老朽化による漏洩の危険等から,無害化処理技術の確立が早急に望まれている。BCD法は液相脱水素反応を利用した有機塩素化合物の化学的脱塩素処理プロセスである。この反応機構は水素供与体物質から生成した水素ラジカルが有機塩素化合物中の塩素と置換することにより無害化させる。本論文ではBCD法の確立を目的として,反応速度に影響をおよぼすと考えられる因子について検討し,最適反応条件の知見を得ること,および完全な脱塩素の確認を目的とする。検討の結果,BCD法による脱塩素反応は一次反応と見なすことができ,活性化エネルギーを算出した。アルカリの添加量は反応速度に影響をおよぼすことが確認された。反応生成物である無機塩素を定量し,脱塩素反応が生じていることを確認した。

キーワード: アルカリ触媒分解法,脱水素反応,脱塩素反応,水素供与体,反応速度定数

廃棄物学会論文誌,Vol. 7, No.6, pp.305-311, 1996

原稿受付 1996.1.31

* (株)荏原総合研究所 環境研究所

** 東京農工大学 工学部 物質生物工学科

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(株)荏原総合研究所 環境研究所 高田  誠