【委員会報告】

廃棄物学会会員の国際協力に対する意識について

――「国際協力人材登録制度(仮称)」に関するアンケート調査結果より――

廃棄物学会国際委員会*

【要 旨】

経済の成長に伴って肥大する廃棄物問題は,人の生活に密着した環境問題である。先進国では,物質文明がもたらす大量・多様な廃棄物問題に直面し,その適正処理,減量化,リサイクルに向けた循環型社会の構築を模索している状況にある。一方,多くの途上国においても,経済成長と都市化の進展に伴い,公衆衛生・環境衛生問題として,汚水処理・ごみ処理の必要性が認識される時代に入っている。廃棄物処理は,清掃・収集サービスの提供を主とする時代から,高度な施設・テクノロジーを必要とするものとなり,さらに,グローバルな資源・環境問題として経済・社会システムの改革を迫る必然的な流れにあるといえよう。わが国はごみ・廃棄物処理,し尿・下水処理の分野で,高度成長の時代を経ることにより極めて多くの経験を積んできた。この間,海外の処理技術の導入とこれを発展させ,独自の制度・処理体系を育ててきた。このような経験・技術の蓄積は,開発途上国が直面している汚水・ごみ問題の解決と,今後突きあたるであろうより複雑な廃棄物問題への対処に大きく貢献できる潜在能力を持つものである。わが国の経済・技術協力の充実のために,このような蓄積を活用することが大きく期待されている。廃棄物処理の技術・制度体系は,経済・社会・伝統の違いともあいまって,極めて多様である。多くの途上国においても,多様な援助の背景の下,廃棄物処理に関する様々な取り組みが行われており,この中にはわが国が学ぶべき事柄も少なくない。廃棄物学会は,英文で“TheJapanSocietyofWaste Management Experts”と称しており,3千人を擁する幅広い廃棄物専門家の集団であることを海外に示している。このような廃棄物学会が,わが国の国際協力にどのように貢献できるかとの観点から,国際委員会では「海外の廃棄物問題の解決に何らかの協力をしたい」と考えている会員のニーズを発掘する仕組みについて検討してきた。すなわち,こうした会員情報を公的派遣機関に提供すること等により,海外技術協力やそのための能力開発等の機会を提供する一助としようとするものであり,「国際協力人材登録制度(仮称)」として検討してきた。今回行ったアンケート調査は,人材登録制度の検討の一段階として会員の国際協力に関する意向を調査したもので,神戸市で開催された平成7年度研究発表会の会場ならびに学会ニュース第30号で配布した用紙を回収したものをまとめたものである。回答を寄せていただいた方は会員の1割を超える309名に及んだ。

廃棄物学会誌,Vol. 7, No.6, pp.496-506, 1996

原稿受付 1996.9.13

* 四阿 秀雄(東京都環境保全局)

平井 久和(東京都清掃局)

二見 壽之((財)日本環境衛生センター)

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