食品産業廃棄物を利用した食用キノコの培養基の開発――排水処理汚泥の場合――
江 口 文 陽*・岡 元 満 美*・牛久保 明 邦*・檜 垣 宮 都*
【要 旨】 食品製造業から発生する余剰汚泥は,栄養成分に富み,重金属などの有害物質の含有量が少ないことから,再資源化資材として期待される。本研究では,食品産業廃棄物の減量化と再資源化に着目して,特に余剰汚泥を栄養剤とした培地での食用キノコの栽培について検討した。その結果,余剰汚泥を添加した培地の中には,既存のキノコの培地よりも良好な菌糸成長を示すものがあった。また,栽培試験による子実体収量を測定したところ,木粉に余剰汚泥を添加した培地の中には,一般的な木粉米ぬか培地よりも子実体収量が増加する種類も確認した。本研究から,食品産業から発生する余剰汚泥は,製造業種とキノコの品種の選択によって,キノコ栽培用の栄養剤になることが結論づけられた。
キーワード: 食品産業廃棄物,汚泥,栄養源,食用キノコ,ヒラタケ属
廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.1, pp.16-21, 1997
原稿受付 1996.2.13
* 東京農業大学農学部
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江口 文陽