【論  文】

ホタテガイ廃棄組織からの微生物的カドミウム除去

菊 池 愼太郎* ・寺 田 淑 恵* ・関   千 草*・大 嶋 尚 士* ・澤 谷 拓 治**・穂 刈 勝 利***・梅 原 泰 男***・高見澤 一 裕****

【要 旨】 ホタテガイ養殖業およびその加工業において廃棄される非可食組織は多量のカドミウムを含有するため飼料への転換が困難である状況を踏まえ,これら組織からの微生物的カドミウム除去について検討した。廃棄組織抽出液を栄養源として土壌微生物群を培養し,次いでこれに硫酸塩還元菌を接種して培養したところ,抽出液中に溶存するカドミウムは硫化物として沈殿した。組織中ではタンパク質などの因子と結合して存在するカドミウムが土壌微生物群の分泌する酵素によって遊離状態となり,これと硫酸塩還元菌が生成する硫化水素とによって硫化カドミウム沈殿が形成され,結果的に反応系からこの重金属が除去される機構が推定された。以上の処理によって得られた標品の粗タンパク質,粗脂肪および粗繊維の成分比は従来の市販飼料とほぼ同等の値であった。

キーワード: ホタテガイ廃棄組織,微生物的カドミウム除去,土壌微生物群,硫酸塩還元菌,硫化カドミウム

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.2, pp.65-70, 1997

原稿受付 1996.10.16

* 室蘭工業大学工学部応用化学科

** 北海道工業技術センター

*** 日本化学飼料(株)

**** 岐阜大学農学部生物資源利用学科

連絡先:〒050 北海道室蘭市水元町 27-1

室蘭工業大学工学部応用化学科 菊池愼太郎