【論  文】

クロム系廃棄物から流出する6価クロム化合物のセメント・ベントナイト系地中壁を用いた

地下水汚染防止に関する実験的研究

柏 谷   衛*・出 口   浩*・上 岡 誠 一**・岩 佐   弘***

【要 旨】 埋め立て処分されてきたクロム系廃棄物が掘り返されると,残留する6価クロム(Cr6+)化合物が降雨時に流出し,地下水を汚染する。このCr6+化合物による地下水の広域的な拡散を防止するため,高炉セメントとNa型ベントナイトによる地中壁(CB地中壁)で,遮蔽する手法について実験的研究を行った。硬化発現中のCB地中壁の透水係数は10−7m/sオーダーであり,Cr6+化合物を遮蔽するには,硬化発現の28日後には,2×10−9m/s,またはそれ以下の透水係数を維持することが必要であった。MgCl2270mg/lとpH調整のためのCa(OH)2の添加,MgCl2270mg/lにポリ塩化アルミニウム(PAC)またはAl2(SO4)3の付加材料を加えて透水実験を行ったところ,前記では,pH9.0〜9.5でCr6+遮蔽能力が向上でき,後記のPAC添加では架橋作用に伴いゲル状疎水性コロイドを生成することから,CB供試体の透水係数を10−9m/sオーダーにまで短期間に低下させることができた。PACの最小添加量は約30mg/?であった。

キーワード: クロム系廃棄物,CB地中壁,透水用Cr6+地下水,透水実験,目詰まり促進物質

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.2, pp.97-106, 1997

原稿受付 1996.5.14

* 東京理科大学理工学部

** ライト工業(株)(前東京理科大学大学院理工学研究科)

*** ライト工業(株)技術研究所

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東京理科大学理工学部 土木工学科 柏谷  衛