自動車生産工場における有害化学物質の自主管理

岩　井　哲　郎*・安　藤　健　吾**

【要　旨】　近年，多種多様な化学物質による環境問題が国内においても議論され，潜在的に有害な未規制化学物質の環境中への排出および移動を自主的に管理・軽減していくことが求められており，トヨタ自動車における有害化学物質の自主管理手法を述べる。化学物質の管理手法を入口・出口に分け，入口管理手法として，(1)管理すべき化学物質を国内外の環境法規等から抽出した「トヨタ化学物質管理リスト（2,232物質）」の作成，(2)リスト該当物質および含有量の原材料仕入先からの報告制度の構築，また，出口管理手法として，(1)環境負荷候補物質選定のための「環境インパクトデータベース」の作成，(2)各工場使用部署毎の化学物質使用量把握のための「使用状況情報システム」の構築，(3)使用状況調査による環境媒体移行係数の把握，(4)気象観測等による拡散希釈倍率の把握について体系的に述べる。

キーワード: 未規制有害化学物質，自主管理手法，環境保全事前検討制度，環境負荷軽減

廃棄物学会誌，Vol. 8, No.2, pp.128-138, 1997

原稿受付 1997.1.28

* トヨタ自動車株式会社 プラントエンジニアリング部 地球環境室 室長

**地球環境室 主査

連絡先:〒471-71　愛知県豊田市トヨタ町1番地