土壌,地下水中におけるテトラクロロエチレンの塩化ビニルおよびエチレン化
徳 永 隆 司*・永 淵 義 孝**・世 良 暢 之**・田 上 四 郎**北 森 成 治**・松 藤 康 司***・花 嶋 正 孝***
【要 旨】 テトラクロロエチレン(PCE)汚染土壌,井水について,嫌気性微生物による脱塩素化物である塩化ビニル(VC)を調査するとともに,その生成要因について検討した。VCは数箇所の井水で検出された。また,脱塩素化生成物を多く含む井水中にはPCEをジクロロエチレン(DCE)に脱塩素する橙色の色素産生菌が存在していた。PCEのVC化,さらにエチレン(ET)化には,汚染井水の貯留槽の沈殿物の添加が不可欠であり,グルコースやシステインの添加がこの反応をさらに促進した。完全分解系(PCEからET)と不完全分解系(PCEからDCE)の二種のPCE分解系を井水から構築し,脱塩素反応の差について検討した。その結果などから,不完全分解は通性嫌気性菌群で可能であるが,完全分解には,さらに嫌気性を要求する細菌群が関与する必要があると思われた。完全分解系では,21mg/?のPCEを25℃,16日間でETまで完全に脱塩素した。
キーワード: テトラクロロエチレン,塩化ビニル,生分解,土壌,地下水
廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.4, pp.121-128, 1997
原稿受付 1996.6.17
* 福岡県保健環境研究所兼福岡大学大学院工学研究科
** 福岡県保健環境研究所
*** 福岡大学工学部土木工学科
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福岡県保健環境研究所 徳永 隆司