【論  文】

Bacillus subtilisを接種した芝草病害防除コンポストの作成

中 崎 清 彦*・木 代 芳 幸*・平 岡 幸 子*

【要 旨】 芝草病害を防除するコンポストを作成するために,芝草病原菌に対する抑制細菌をコンポスト原料に接種する方法を試みた。抑制細菌のストレプトマイシン耐性株(Bacillus subtilis N4-1)を用いて,接種した抑制細菌以外に種々の微生物が存在するコンポスト中で抑制細菌のダイナミクスを測定した。刈り芝を原料としたコンポスト化において接種したN4-1株を増殖させるには,原料中にもとから含まれる細菌の濃度を低減する必要があり,4.3×105CFU/g-ds以下に低減したとき,生成したコンポストには芝草病原菌を抑制する効果が見られた。また,N4-1株を接種して作成したコンポスト製品の一部を,種菌として繰り返し原料に接種しコンポスト化したところ,繰り返し回数の増加にともないコンポスト中のN4-1株濃度と,全細菌中に占めるN4-1株の割合は急速に低下して繰り返し5回目で病原菌に対する抑制効果を失った。また,N4-1株と芝草病原菌に対して抑制効果を持たない細菌(Escherichia coli E2)の菌体混合試料液を用いて病原菌の抑制効果が発現される条件について検討した結果,全細菌中に占めるN4-1株の割合が抑制効果の発現や,効果の大きさに影響をおよぼすことが明らかとなった。

キーワード: コンポスト化,微生物接種,植物病害,生物学的防除,Bacillus subtilis

廃棄物学会論文誌,Vol. 8, No.4, pp.166-174, 1997

原稿受付 1996.11.6

* 静岡大学工学部

連絡先:〒432 浜松市城北3-5-1

静岡大学工学部物質工学科 中崎 清彦