【特 集 :産業廃棄物】

産業廃棄物管理システムと経済性

植 田 和 弘*

【要 旨】 産業廃棄物問題とそれに対する処方箋に関する経済的側面を解説した。産業廃棄物の不法投棄や不適正処理・処分は経済現象であり,排出事業者や処理業者に常に潜在している処理コストを節約しようとする動機が,市場での逆淘汰現象を通じて顕在化してきたものである。また,産業廃棄物問題は,法ルールや行財政システムの問題でもある。現行法が無力であることや国・自治体の産業廃棄物行政の無策が現在の事態を招いたという側面も重要である。今回の法改正がどの程度問題の解決につながるかについては今後の政省令の内容や手続きの運用過程が注目される。最後に,産業廃棄物問題と原状回復の費用負担問題の経済的性格を分析した上で,公共部門によるモニタリングの難しさを考慮すれば,原状回復制度にデポジット制度を適用することが有効であることを論じた。

キーワード: 産業廃棄物管理システム,経済的側面,社会的費用,不法投棄,デポジット制度

廃棄物学会誌,Vol. 8, No.5, pp.348-351, 1997

原稿受付 1997.7.25

* 京都大学大学院経済学研究科 教授

連絡先:〒606-01 京都市左京区吉田本町 京都大学経済学部